黒縁メガネとワンピース

「これでいいよな?」

この場にいる全員が動揺する中、唯一平然とした様子で余裕の笑みを見せるゆう君。

そして、司会者を挑発するように、更に私の体を引き寄せて来て、何やら恋人同士さながらの状態。

それを見せつけられた司会者も口をあんぐりと開けたまま固まり、会場の前列にいるゆう君ファンは何人かショックで倒れてしまったりと。会場は混沌としている。

「……え。いや、別にそこまでは……。まあ、離れているよりはいいでしょう。それじゃあ、二人とも笑って下さい。…………くそ、リア充が」

それから、ふと正気に戻った司会者は、平静を保った様子で進行を続けるも、最後の憎しみが込められた呟き声は、バッチリとこちらの耳に届いて来た。


「……ゆ、ゆう君。お願い、離して。私、恥ずかしくて死んじゃう……」

これまで、これ程密着したのは初めてで。
幼い時だって、こんな風に抱き寄せられたことは一度もなかったのに。

混乱しながらも、気持ちが舞い上がる一方。
心臓が痛いくらいに激しく鳴り響き、上手く呼吸出来なくなってきた私は、弱々しく彼に訴える。

「倒れたら、このまま俺が運んでやるよ」

それなのに、更に刺激を与えられ、本気で倒れそうになる手前。

ゆう君が前を向いたタイミングで、カメラのシャッターが切られ、写真撮影は呆気なく終わった。

これで、ようやくこの場から解放されるのはいいけど、未だ思考回路は上手く回らずで。

もはや周りを気にする余裕などなく、呆然と立ち尽くしていると、ゆう君はそのまま私の手を引いて会場を後にしたのだった。