黒縁メガネとワンピース

「そういえば、加代の方は?さっき岡田来てたよね?」

すると、平静を取り戻した恵梨香から投げられた痛い質問に、表情がぴきりと凍り付いた。

「う、うん。でも、すぐに帰っちゃった」

それから、期待を込めた視線がぐさぐさと突き刺り、私は目を泳がせながら苦笑いで答える。

「なにそれ?こんなに可愛くなった加代を連れ出しもせずに?あいつマジで何なの?」

一体何処まで想像していたのか。私の返答に血相を変えた恵梨香は、整った綺麗な眉毛をへの字にして肩を強く掴んできた。

「私は別に構わないよ。だって、会いにきてくれただけで嬉しいから。本当はもう少し一緒に居たかったけど、顔を見れたからそれでいいんだ」

せっかくの幸せモードを台無しにしてしまったのは申し訳ないけど、とりあえず今はそれで十分なんだと自分にも言い聞かす。

ほんのちょっと前までは、ゆう君と顔を合わすことすら出来なかった。

だから、あの頃と比べれば今は大分進歩したと思う。


私に会いに来てくれた。

それだけで、良かったのに。

だけど、満足出来ない自分がいて。


いつの間に私はこんなに欲深くなってしまったのだろう。

「そんなわけないでしょ。もう、あたしに遠慮なんてしないの!」

そんな私の胸中は言わずとも筒抜けだったようで。

恵梨香は頬を膨らませながら、私のほっぺたを軽くつねってきた。

やはり私のことを熟知している恵梨香には敵わない。

そう痛感する親友の愛情がじんわりと胸に染み込んできて。

私は自然と笑顔が零れ落ち、素直に頷いてみせた。