黒縁メガネとワンピース

「こいつが、例の奴?」

そんな私達のやり取りを暫く傍観していた俊君からポツリと投げられた質問に、心臓がどきりと震える。

「あ、う、うん。幼馴染の岡田佑樹君だよ」

まさかここであの話をされるとは予想だにせず。

私は気恥ずかしさに、視線を明後日の方向に向けながら今度はゆう君を紹介した。

「“例の”って何だよ?」

すると、ゆう君は眉を顰め、不服そうな表情で静かに問いただす。

どうしよう。

なんて答えればいいのやら。


若干パニック状態に陥り、頭の中が真っ白になっていく中。

不意に俊君の手が腰に回り、勢い良く私の体を自分の方へと引き寄せた。

何が起こったのか。

咄嗟の出来に思考が付いていけず、私はされるがままに体を俊君に預けて、その場で固まってしまう。

「さっきまで一緒に居たんだよ。その時、あんたの話聞いたから」

それから、硬直する私にはお構いなしと。

弧を描く挑発的な笑みを浮かべ、俊君は私の体を更に引き寄せて来た。

そのせいで俊君の息遣いと温もりが全身に伝わってきて。
ゆう君の前だというのに体は正直に反応してしまって、心臓が今にも飛び出しそうなくらい激しく暴れ回っている。


「じゃ、マジで俺行くわ。それじゃあな」

動揺しまくる私とは裏腹に。

平然とした様子で俊君はあっさり私から手を離すと、何事もなかったように、さっさとここから立ち去ってしまった。