黒縁メガネとワンピース

「あっー、くそっ!腹減った!」

その時、唐突にドアが勢い良く開き、ジャージ姿の俊君が入ってくると、苦虫を噛み潰した表情で乱暴に鞄を玄関へと放り投げて来た。

今日はサッカーの試合だからと言って、今朝早い時間に家を出ていった俊君。

この様子を見る限りだと、恐らく結果は良くなかったのだろうか。

「おかえり俊君。……今日の試合どうだった?」

明らかに不機嫌そうな俊君の顔を私は恐る恐る覗き込むと、射抜かんばかりの鋭い目で睨まれてしまい、思わず怖気付いてしまう。


「悪い。加代に八つ当たりしたってどうしようもないのにな」

はたと我に返った俊君は、慌てて視線を反らすと、深い溜息をはいてから履いてたスニーカーを脱ぎ始めた。

こういう時は何で声を掛ければいいのか。
コミュ力の低い私には上手い言葉が見つからず、頭を悩ます。

「俊、お客さんが来てるんだからちゃんと挨拶しなよ」

すると、そんな荒れてる俊君を、呆れた顔で見下ろす海斗さん。

「あ?客?」

俊君は少しドスの効いた声で返事をすると、ようやく隣に立っていた恵梨香の存在に気付き、顔を上げた瞬間だった。