彼を初めて見たのは、今年の四月に入ってすぐだった。
彼はいつも、県内にある私立高校の制服を着て現れる。
決まって小さな男の子を連れていた。
最初は気にもとめていなかったけれど。
読書室で一緒になると、彼は柔らかい声で、男の子のために、ゆっくり絵本を読んでいて。
その声が心地良いなって思うようになった。
そのうち、彼を目で探すようになって。
整った顔立ち、背が高くてスラっとした姿や、美しい手に、ドキドキするようになった。
名前は知らない。
知っているのは、彼の優しい声と美しさ。
それと、雨の日にしか図書館に来ないこと。
電車に乗って、図書館までやって来た。
傘をたたんで、入館する。
静かな空間に貸し出しカウンターから、ピッ、ピッと、本の裏表紙に貼ってあるバーコードを読み取る機械音が聞こえる。
この音、大好き。



