「ベンタ」
「……」
「ベンタいくな」
「離して…?いかないと…」
「いくなっ」
勝たなきゃ終わらないのに、どうして止めるんだろう?
首をかしげるわたしに
成生くんは悲痛な表情を浮かべた。
「もう帰れなくていいよ。
ずっとこの世界にいよう」
言葉の意味が理解できなかった。
なんでそんなこと言うの?
わたし、こんなに頑張ってるのに。
「ダメだよ、帰らないと、成生くん…」
「おまえがいればそれでいい。帰るべき場所になんて未練はない。もう傷ついたおまえなんて見たくない」
やっぱりわからない。
成生くんがどうして泣きそうな顔をしているのかもわからない。
『邪魔すんなよ、オウジサマ』
ポピィが成生くんの手を引き剥がす。
そしてわたしはすぐに肩を抱かれ
向かうべき場所へと導かれる。
『行くぞベンタ』
その声に、また心臓が強い音を刻んだ。
怖い
おぞましい
次はどんなふうに死ぬんだろう。
どんな苦しみが待っているんだろう。
繰り返していればいつか終わるのかな。
死と恐怖、絶望。
わたしという存在を構築しているのは
もはやそればかりだった。



