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『せっかくだし、つけとけよ』
階段をのぼっている最中
ふわふわとしたものが頭にかぶせられた。
成生くんがくれたうさぎ帽。
そしてダリが勝手に被っていた記憶。
「…いらない」
『ダリより似合ってるぜ』
「どうせ飛ばされちゃう」
『ボタン付けとけばダイジョーブだって』
無理やり顎の下でボタンを留められた。
なんのつもりだろう。
はしゃぐ気分じゃなかった。
あいかわらず震えは止まらないし、頭は働かない。
死をまとう恐怖の連続が人の心を壊していく。
絶望にすべてを侵され、いずれは成生くんのことすら思い出せなくなるのだろうか。
そんなの絶対に嫌だけど
どうすればいいのかもわからない。
とにかく、考えることをやめてはいけない。
考え続けなければ。
そのとき、手をぎゅっと握られた。



