「…あまり深く考えずにやろーよ。ダリだってきっと、フラットなスタンスでいろってことを言いたいんじゃねーかな」
未知の世界にも、浮ついた足もとにも、全然動じていない成生くんはすごいと思う。
先のことばかり考えて不安になるわたしとは大違い。
「そう、だね…」
「……」
「……」
「……ちょっとまってて」
「え?どこいくの、成生くん!」
わたしの呼びかけなどスルーして、成生くんはどこかへ走っていってしまった。
前方を歩いていたキャストのみんなも、不思議そうにこちらを振り返っている。
すると成生くんはあっさり戻ってきた。
その手にはなにかふわふわしたものが持たれていて
「あげる」
頭に乗せられたのは
うさぎの耳がついた帽子だった。
「わっ、なに?」
「そこのショップからかっぱらってきた。
被っときなよ」
「ええっ、お金払わないとだめだよ!」
「いーだろそんなの。
おれたち金なんて持ってねぇし」
成生くんは本当になにも気にしていない様子でクマの帽子をかぶる。
この世界で偉い立場であろうダリがいる前でよくそんなことができるなぁ
道化師3人と同じようにこちらを観察している彼へ、おそるおそる視線を投げた。



