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黙々と階段をのぼる。
『泣いても笑ってもこれが最後。最後…だから、聞かせてくれよ
ベンタ、おまえの命は軽いと思うか?』
なぜこの道化師は同じ質問を繰り返すんだろう。
なぜそこまで、命の価値観を聞きたがるのだろう。
この狂った世界で、そんなものを知りたがる感性など枷にしかならないはずなのに。
「重いよ。
わたしだけじゃなく、あなたの命だって」
まっすぐ目を見て伝えた。
ポピィはなにも言わなかった。
ただ2つの瞳だけが大きく揺れた。
「ま、とはいっても、わたしか成生くんの命どちらか選べと言われたら、迷いなくわたしの命を差し出すんだけどね」
『…どうしてだ。死ぬのが怖くねーのか』
「怖いよ。でもわたしは弱い。自分と引き換えに死んでいった人間への罪悪感を背負って生きていく覚悟がない」
『……』
「成生くんが大切だから。なんて、それだけの強い理由で戦ってみたいけどね本当は。わたしは弱くて臆病な人間だよ」
そっと、ポピィの手をとった。
「怖いから握っててもいい?」
顔をのぞきこめば舌打ちをされる。
でも拒否はされない。
うん、ポピィの手は温かい。
落ち着く。
わたしは大丈夫。
一段一段を踏みしめてのぼった。



