やばい。
前ならともかく,後ろからはまずい。
横に視線を流しても,真ん中を歩いていた私からは手すりすら届かない。
どうしよう,取り敢えず身体を捻って。
せめて,階段より下の平たいところに落ちたいところ。
そんなことを考えながらも,私はただの一般生徒。
怖くなって,最後にはきゅっと目を閉じるしかなかった。
ーーードン。
思っていたより,怖くない音。
響いた予想外の音に,ゆっくりと目を見開く。
「え」
誰から出たのかも分からない声を耳にいれて,私は私を軽々と"受け止めた"人の顔を見上げた。
「か……がみやくん?」
どこか息も切れていて,額には汗が滲んでいる。
怪我は無いみたいだけど。
そこは男の子と言うことなんだろうか。



