相変わらずアンニュイな吐息を含んだ加賀宮くんの言葉で,ドア下のでっぱりに足を引っ掻けながら私は教室へと戻った。
ちなっちゃん……?
気に入ったのかなと,傘を教室の後ろへ立てる。
今度はじゃあねという彼の声が反芻された。
私なんて言ったっけ。
じゃあ(これで)。
もう会わないくらいのつもりで告げたのに。
じゃあねって,なんだろ。
もちろん,じゃあ(それで,これで)ね。
だと思うんだけど。
まさか……じゃあ(また)ね。
じゃ,ないよね?
傘,貸しただけなんだし。
そうだよ,ね?
そんな違和感も,鐘が鳴れば忘れてしまった。



