だからって。
「浬。ねぇ。近いってば」
「そう?」
「そうだよ。もうちょっと離れて。歩きづらいでしょ」
「そんなこと無いと思うよ」
「私が!!」
着いてくるくらいなら隣を歩け。
そう突きつけたあの日から,私の日常はほぼ浬1色になっていた。
朝起きて家を出てみれば浬がそこにいるし,授業の行間休みは必ず送りにくるし,帰りまで浬と下校する日々。
少しいい加減にしてほしいくらいである。
ただ横を歩くならいい。
廊下では特にべったりとしだれかかってきていて,まるで私に彼女でも出来たかのようだった。
長身だから,浬の方がしんどいはずなのに……
本人は気にも止めていない。
変に噂されても困るんだけどな。
悪気がないのも考えもの。
「じゃあ,ね」
もう何度目かも分からない。
どうせ50分後にはまた会うのに。
それでも声をかければ,浬はこくんと大人しく頷いて去っていく。
また気だるげに肩を落として,眠たげに瞼を落として。
まぁ,それが浬だよな……と思うけど。



