溺愛癖のあるストーカーはその分まっ直ぐみたいです。






「ありがとう。……ねぇ,浬」



教室から教室への短い移動。

そんな単純な行動の中で,開きっぱなしだった筆箱をひっくり返すというドジをしてしまった私は,どこからともなく現れた浬に手伝われ,お礼を口にした。

でも,それは置いといて……とそのまま浬を見上げる。

きょとんと動作を遅らせた浬に,私は問いかけた。



「私のストーカー,してたりする?」



浬に出会ってからだった。

どこにいても1人じゃない気がするようになったのも,視線を感じるようになったのも。

そして,私が何か困っていると,浬はいつもすかさず助けてくれた。

浬は何も答えなくて,だから私が代わりにもう少し口を開く。




「怒ってるわけじゃないよ。ただ,どうしてなのかと思って」



何をするわけでもない。

だから何のためなのかも分からない。



「……ごめん。だけど別に,どうしてとかそういうのはなくて。ただ」



そうして,浬は考えるように口を閉じた。



「私と一緒にいたい?」



問いかけると,浬は頷く。

ぶきっちょ。

他の女の子なら,怖がられても仕方ないのに。

友達いないって,言ってたしな。

冗談じゃなかったみたい。