「あ。浬,お疲れー。ばいばい」 早足で下駄箱に向かう私。 長身で目立つ浬を見つけて声をかけると,浬は勢いよく私を振り返った。 教室も選択授業も違う私達。 友達だと言うなら,こんなときくらいしか声もかけられないと思ったけど…… 違った? と,驚いた様子の浬に首をかしげる。 すると,柔らかく微笑んだ浬はふらりと手を振って 「うん。またね」 と返してくれた。 周りからひそひそと声が聞こえるけど,友達だと言うなら気にすることはない。 そうしてほんの隙間で声をかけあっては,月日が流れた。