「……奈々」
「なぁに?」
「あたし、ポンポン一生付けてる」
「言うと思った」
明日も明後日も、ずっと前髪結ぶ! ちょんまげ万歳! ポンポン万歳!
「お腹すいたわ」
「だねー!」
歩きだした奈々のうしろを、ぴょんぴょん飛ぶように歩きながらついて行く。
「そういえば、駅前に新しいカフェが出来たのよ。今度行きましょう」
「へーっ! 行く行くっ」
「透の奢りで」
「…………」
にこっと笑う奈々に、ドバッ!と一気に冷や汗が出た。
「奈々ぁぁああ! ごめんーっ!」
「何に対しての謝罪かしら」
「奈々を置いてって、奈々が変な男に絡まれたのは、あたしのせいです!」
「いいのよ? 別に。昴先輩しか見えてなかったんだものね?」
「奢る! 何でも奢ります!」
「いいのよ、無理しなくても」
「奈々ぁ~!」
ふふふと魔女のように笑う奈々にすがりつきながら、あたしは今日あった幸せなことを幾度も振り返っていた。



