「ナンデなくの~?」
「泣かせちゃダメじゃん、昴」
「透は泣き虫なんですよ」
「なき……ムシ!?」
「バッカ! 虫ちゃうやろ透はっ」
「――ぷっ」
つい笑ってしまったあたしを、昴先輩が不思議そうに見やる。
「クライベイビーって意味です」
「……」
どぇぇぇぇえ!?!?
昴先輩の手が伸びてきたと思ったら突然ぎゅっと抱き締められて、熱という熱が顔中に集まる。
「すっ、すすす昴先輩!?」
何この状況! 何で今あたしは昴先輩に抱き締められているのですか!?
「ヨシヨシ」
「アホゥ! 何か捉え方ちゃうやん!」
「え~?」と言いながら昴先輩はあたしを両腕にすっぽり収めて、ずっと頭を撫でてくれた。
ドキドキしすぎてちっとも安心出来なかったけど、離された時少しだけ後悔してしまった。
抱き締め返せば良かったなぁ……なんて。



