「いや、あの……はひ……」
何してんだあたしは!
見られた! 昴先輩に股間蹴ったとこ見られた!!
「はー……っほんまウケる!」
「3年によくあそこまで! くくっ……ダメだお腹痛い」
「透、昔からあたしを守ってたからあの技覚えたんですよ」
「「ぎゃっはっはっは!!」」
「サイコーッ!」と、爆笑の翔太先輩とキョウ先輩。
恥ずかしすぎる……。
俯いて、かぁーと赤くなる顔を隠した。
「トール」
「……」
やだ、やだ。あたし女じゃない! 引くよ普通!
「アリガトー」
「……」
恐る恐る顔を上げると嬉しそうに笑う、昴先輩。
……いつも、姿を探してるだけだった。
それほど遠くも、それほど近くもない距離から、いつも見ているだけだった。
あの桜舞う季節から、ずっと。
「――あ……あたしっ」
「ウン?」
何でか込み上げた涙が見えないように、また俯いてしまう。
あたしは……。



