「ははっ! 透、走ってきたの?」
「――あ、キョウ先輩! 翔太先輩もっ。こんにちは!」
「おっすー」
今更2人に気付くって、つくづくあたしは昴先輩しか見てないな……。
立ち上がると、昴先輩がイスを引いてくれた。
「どーぞ?」
「あっ、すみません!」
隣! また隣! イス引いてくれるなんて、ジェントルマン!
「ところで、奈々ちゃんは来てへんの?」
翔太先輩に聞かれてから言葉を理解するまで1秒。
サーッと血の気が引いて勢い良く振り返ると、奈々が先輩らしき男子生徒に囲まれていた。
いやぁあああああ! 奈々に近づかないで!!
「奈々っ!!」
あわただしく席を立って、奈々の元へ走る。
奈々は笑顔で対応してたけど、あたしには分かるんだ。
MAX不機嫌ですね……?
「ごめん奈々! 行こうっ」
奈々に群がる3人の先輩をかき分けて華奢な手を引くと、「おい」とあたしの前に色黒で金髪の男が立ちはだかった。
うわかっこいい!
でもチャラい雰囲気を全身から醸し出してますね……!