「――はぁっ」


肩で息をして、学食の入り口に着く。


「やっぱり人多いわね」


多くの生徒がざわめく中、すぐに大好きなプラチナの髪を見つけた。


金髪の人が何人かいても、輝きが違う。


「ちょっと、透っ」


奈々の声が聞こえたけど、あたしの足は一直線に昴先輩へ向かった。真っ直ぐ、昴先輩の背中を見ながら。



「す……昴先輩っ!」


あたしに向けられていた、大きな背中が動く。


「トール!」

「――……」

「トールッ!?」


振り向いて極上の笑顔を見せた昴先輩に、へなへなと腰が抜けるように床に座り込んでしまった。


「はぁっ……はは……えっと、久々に走ったから、足が……」


ドキドキする鼓動を全身で感じながら苦笑いすると、昴先輩は手の甲であたしの頬を撫でる。


へ……?


見上げても、昴先輩は何も言わずに微笑んでいるだけで、きゅうっと胸が静かに締め付けられる。


……昴先輩。あたし今日、顔洗いません。