プラチナ王子



「透をボロクソに傷つけていいのは世界で私だけよ」


天使のような微笑みでとんでもないことを言う奈々に、ブルッと身震いしてしまった。


ちょっとキュンとしたあたしがバカだった……。


「奈々の口からクソなんて言葉出るの、反対」

「やぁね。透の前でしか言わないわよ」


上へ上へとカールされた睫毛が印象的な目元を細めて微笑む奈々は、あたしが知ってる女子の中で1番美人。


中学時代と何ら変わらず、高校に入学してからも奈々に憧れる男子は多い。


見た目――というより、奈々はあたし以外には清楚なお嬢様を演じるから、それはそれはモテる。


まあ、ほんとに生粋のお嬢様だから違和感はないんだけど、本当は口が悪くて嘘みたいに腹黒い。


「……詐欺だ」

「お黙り透」


美しい笑顔で発せられたまさかの言葉に白目をむいた瞬間「透いるー!?」と、廊下から誰かに呼ばれた。



見れば、クラスメイトの矢部 大聖(やべ たいせい)が教室に入ってきたところだった。