それぞれセキガエセンを終えたあたしたちは一緒に食堂を出て、階段の前で立ち止まった。


「ほな、また」


真っ先に2階へ上がっていく翔太先輩に続きキョウ先輩も微笑んでから階段をのぼっていく。


昴先輩は小さく手を振ってくれて、ぎこちなく振り返すとふにゃっとした笑みを見せてくれた。



先輩たちが見えなくなると、早々と先に歩いていた奈々へ猛突進。


「奈々ぁぁああ!!」


後ろから飛び付いたあたしは、力の限りぎゅぅうううと奈々を抱きしめる。


「ありがとう! 天才! さすが奈々!! 好き! 愛してる!」


抱きしめるだけじゃ事足りず、ぐりぐりと奈々の背中に頭をめり込ませていると手の甲を思いっきりつねられた。


慌てて離れると、ゆっくり振り向いた奈々はよっぽど苦しかったのか、マイナス100度の笑顔を浮かべている。


「その馬鹿力で私を抱きしめて窒息させようなんて……ふふっ。度胸あるわよね、透って」

「ヒィッごめんなさい! 馬鹿力が奈々様に抱き付いてごめんなさい! わざとじゃないんです!」


今にもひざまずきそうなほど必死に訴えると、「冗談よ」なんて返ってきた。


嘘だ……笑顔だったのに奈々の周りだけ吹雪だったもの……。


これからは奈々をシャボン玉だと思ってから抱きしめよう……。


「あそこまで上手くいくとは思わなかったけど、単純な人がいたおかげね」


ふーっと溜め息と共に冷や汗を拭いながら、奈々の言葉を頭の中で繰り返す。