とても綺麗な青い瞳とプラチナの髪を間近で見たこともなければ、片言の日本語を聞いたこともなかった。
何の接点もないあたしの名前が向井 透(むかい とおる)だってことも、ひとつ年下だってことも、王子は知らない。
それでもあたしは学校の王子、昴先輩が好き。
「昴先輩は鑑賞用にするのが1番なのに。バカね」
休み時間は決まって昴先輩の姿を探してしまうあたしに、奈々は本音を言ってくる。
中庭に現れないかと窓の外を見ていたけれど、昼休みに昴先輩が外で遊ぶのは稀だったことを思い出して、奈々へ視線を移した。
「一目惚れしちゃったんだから仕方ないじゃん!」
言いたいことは分かるけど、もうこればっかりは本当にどうしようもない。
奈々は呆れたように溜め息をつくと、あたしの頭を撫でる。
「まあ、いいけど。透が傷つくのは見たくないわね」
「奈々……」
さすが親友。
あたしの心配してくれるなんて……。



