――――――…
「――大っ嫌いよ。体育なんて」
「……」
4時間目の体育が終わって更衣室で着替え中、あたしは苦笑いして、なんとか不機嫌全開の奈々をなだめようとする。
「奈々は美人だから」
「美人だとかそんな問題じゃないのよ、透」
奈々が不機嫌な理由は、バレーをした体育の授業中。
担当教員の西郡が教える立場であるのをいいことに、べたべたと奈々に触ってきたんだけど……。
「手だの肩だの腰だの。あの親父……教えてもらうことなんて何ひとつないわよ……」
今すぐ西郡の首を飛ばせる権力を持つ奈々は、怒りに満ちた目で遠くを睨む。
西郡は良かれと思ってやったんだろうなぁ……。
完全に間違った方向性だったから、首が飛んでもご愁傷様としか言えないけど。
「ああ不潔。不快。べったり体をくっつけてきて、信じられないわ」
思い出したのか男嫌いの奈々は身震いをして、「それに比べて……」とあたしをジッと見つめてくる。
「ん?」
「いい子ね、透」
チビのあたしは抱きしめられて、奈々の腕にすっぽり収まった。



