「びっくりよね。透に好きな人だなんて、私も信じられないわ」
「だよなー? 超ビビった……。透はやっぱ、女だったんだな……」
「ちょっと! ふたりして何!? 失礼なんですけどーっ!」
あたしだって、恋するよ!
ムスッとすると、「ごめんごめん」なんて笑いながら大聖は腰を上げた。
「じゃ、俺帰るわ! ふたりとも、また明日な」
「ええ。また明日」
「じゃーね!」
大聖を見送り、目的は果たせたから帰ろうと地面に置いていたカバンの砂を払う。
「面白いわね、大聖」
言いながら奈々は立ち上がって、小さくなっていく大聖の後ろ姿を見ていた。
面白い?……って。
「何が?」
「さぁね? 何だと思う?」
「……黒いのが滲み出てることしか分かんない」
腹黒オーラが、溢れんばかりに奈々を包んでいる。
「ふふ。案外楽しくなりそうね」
言ってる意味が全く分からないけど、ブルッと寒気がして鳥肌まで立ってしまった。
「大聖イジめようとしてるなら、やめてよ!?」
砂をはらったカバンを背中に背負うと、奈々はあたしと同じカバンをキチンと肩にかける。
「なぁに? 私が人をイジめるように見える?」
「見える見える。超見える」
「やぁねぇ透ったら……そんなひどいことしないわよ」
じゃあ、その何かを企んでそうな微笑みは何でしょうかね……?



