「透は、俺のもの、って?」
「……」
「それとも悪い虫の戦意喪失を狙ってるのかしら? まあ、どちらにしても同じことよね。透のこと独り占めしたいんだもの。ねぇ? 昴」
……俺の、もの?
独り占めしたいって、昴が、あたしのことを……?
首に回された両腕にそっと触れて、あたしの首筋に顔を埋めたまま動かない昴を見る。
「……そうなの?」
尋ねれば、昴はやっと少しだけ顔を上げた。目は合わなかったけど、耳元に吐息を感じた途端、昴はあたしから離れる。
「――……」
見上げた先で、眉を寄せ頬を染めた昴が、拗ねた表情であたしを見下ろしていた。
フイッと顔を背けて翔太たちの元へ行ってしまった昴の代わりに、奈々が隣に来る。
「なぁに? 昴に何て言われたの?」
「んー……へへっ! 内緒ーっ!」
奈々の黒いオーラが溢れ出る前に、あたしは昴の背中を追いかけた。
そうなの?って聞いたあたしに、耳元でこっそり言ってくれた昴。
『That's right.But…Keep it a secret.』
そうだよ。でも……ナイショにしてね。
余裕がない自分が格好悪いから? それとも独り占めしたいって思う自分が恥ずかしいから?
だからあんなに、拗ねた顔をしてたの?
そんなの全然格好悪くないのに。恥ずかしくなんて、ないのに。
昴がそんな風に思うなんてちょっと信じられないけど、それって、あたしと同じってことだよね?
余裕なんて持ち合わせてないけど、想う気持ちは誰にも負けないって。
付き合っていても、いつも相手を好きな、ひとりの人間なんだって。
そう言われたみたいで、嬉しい。幸せ。
だからあたしはいつでも、全身全霊で伝えたい。
「昴っ!」
あたしはあなたのことが、大好きですって。



