「ふふっ……も、なんなの、昴……可笑し……っ」
「オレ……なんか、まちがた?」
「そうね。凍らせるじゃなくて、冷やすの間違いね」
「んん! ひやす! ひやさないとっ、トー……ル……」
奈々からあたしに顔を向けた昴はなぜか言葉を濁したけど、あたしは変わらず笑顔を向けていた。
頬にハンカチを押し当てる昴の手に、自分の手を重ねて。
堪らない愛しさを存分に載せて、笑った。
「ありがとう昴。心配してくれて、嬉しい」
「――……」
「もう大丈夫だよ」
へへっと笑って、昴の手から保冷剤を包んだハンカチを受け取る。
「ご飯食べようっ! 翔太たちも待って――…っ!?」
「あら」
「……す、えっ。何!? どうしたの!?」
昴に背を向けた瞬間、抱き付かれた。
首筋に顔を埋められるほどぎゅうっと強く抱きしめられて、背中に感じる昴の体温に一瞬で顔が赤くなる。
「すす、すば、昴っ!?」
ここ、学食のド真ん中です!
昴からの返事もなければ、抱き締められる強さに身動きさえとれなくて、挙動不審になっていると奈々がクスリと笑った。
「昴、余裕ないわねぇ? 王子ともあろう人が……ふふっ」
笑ってないで助けて奈々! このままじゃ恥ずかしすぎて溶けるっ!
そう目で訴えても、奈々はあたしの真っ赤な顔を見て楽しげに瞳を細める。
「よほど見せつけたいのね」
「何を!?」
もはや困り果てて泣きそうなあたしに、奈々は人差し指を口の端にあてて首を傾げた。



