「昴を好きな気持ちは誰にも負けない」
「……っだから……調子ノッてんな!」
「ナニしてるの」
へ………。
ゆっこ先輩の手が振りかざされて、また叩かれると思ってたのに。
ギュッと閉じた目を開くと、昴がゆっこ先輩の右手首を掴んで立っていた。
「……昴……っ」
そう呟いたゆっこ先輩たちの顔が青ざめる。気付けば翔太とキョウも、あたしと奈々の周りに立っていた。
「食堂の入り口で何しとん」
「中まで丸聞こえだよ」
あたしもゆっこ先輩たちも怒りに身を任せて、ここが食堂の入り口だということをすっかり忘れていた。
「トールに、ナニしてるの」
昴はゆっこ先輩の手を離すと、あたしを庇うように後ろに隠す。
「……っだって……あたしっ」
ゆっこ先輩の声が震え、他の2人も何か言いたそうにしてるものの、翔太とキョウがいるせいか俯いてしまった。
「……なんかいもいってるけど、トールがスキなんだ。フマンがあるなら、オレにいって」
「あたしだって昴が好きなんだよ……!」
「ゆっこのキモチはウレシー。でも、こたえれない」
「……っ」
「もう、トールいじめないで」
「……なんでそいつなのよ……っ」
ゆっこ先輩の瞳に浮かんだ涙を見て、ズキンと胸が痛む。
昴のことが本当に好きなんだと、痛いくらいに分かったから。
それでも……。
「ゴメンネ……」
昴が悲しい顔をすると、ゆっこ先輩も悲しい顔をした。
どれだけゆっこ先輩が昴のことを好きでも、あたしも、昴を諦めることなんて出来ない。



