「待てっつーの!」
「……何ですか?」
あたしは諦めて、ゆっこ先輩に向き直る。無視するよりも、話した方が早いと思ったから。
「何じゃねぇよ! 別れろって言ってんのっ!」
「どうしてあなたに言われて、透と昴が別れなくちゃならないのかしら」
「ちょ、奈々……! いいから出てこなくて!」
慌てて止めるも、奈々はすでにゆっこ先輩たちを見据えていた。
「はぁ!? アンタは関係ないじゃんっ!」
「あなたたちこそ関係ないでしょう? 昴と別れろだなんて、そんなことあなたたちに言う権利があるのかしら」
クスッと笑う奈々に血の気が引いていく。やばいと、頭の中で警報が鳴っている。
「奈々! ほんとにいいから!」
「ゆっこはずっと昴が好きだったんだよ! 1年が横取りしてんじゃねぇ!」
「あら、横取りされたあなたが悪いんじゃなくって? ずっと好きって……ふふっ。可笑しい。そんなに好きだったのに、少しも振り向かせられなかったの?」
「「「――っな!」」」
カッ!と、3人の顔が赤くなる。
「1年のくせに生意気なんだよ!」
「ちょっと! やめてくださ……っ!」
止める前に、多分翔太を好きな先輩が奈々の肩を強く押して、伸ばした手も虚しく奈々は転んでしまった。
「奈々に触んなっ!」
「アンタも調子ノッてんなよ!」
奈々の前に立ちはだかるなり、バシッと渇いた音が頭に響く。
平手打ちされた右頬が、ジィン…と熱くなった。
痛みの前にあたしの頭は怒りでいっぱいで、ゆっこ先輩たちを思い切り睨む。
「……っ何だよ」
何だよ?
「ふざけんな!!」
あたしの大声に、ゆっこ先輩たちはビクッと体を揺らす。
「昴が好きなら正々堂々勝負しろっつーの! 悪口言う暇あんなら昴に好きになってもらう努力しろよ! あたしは逃げも隠れもしないんだから! 次奈々に手ぇ出してら、その顔面に蹴り入れてやる!!」
「――……」
固まるゆっこ先輩たちに大きなため息をついて冷静さを取り戻すと、ただひとり、ゆっこ先輩だけを睨んだ。



