「ふ……ぅ……」


涙が止まらないあたしに、昴はゆっくり近付いてきた。優しい手が、流れる涙をすくう。


「ごめんネ。きもち……つたえたくて」

「なん、で……謝るの……っ」


何でか悲しそうに微笑む昴に自分の気持ちを言いたいのに、しゃくりあげて上手く喋れなかった。


「だって……Cafe、きてたヒト」

「……ぐすっ……のんっ?」

「……カレシか、スキな人でしょ?」

「――……はひ?」


のん……が、あたしの彼氏?か、好きな人……?


「違うよ!!」

「……チガウ?」


眉を寄せた昴に、あたしは目も口も開いて唖然とする。


「「――ぷっ」」


耳に届いた笑い声に反射的に振り向けば、奈々と隼人が口を押さえて肩を震わせていた。


「ナナ!? What is that supposed to mean!?」


昴は焦ったように、どういうことなのかと奈々に問い詰める。


「ノン……トールのたいせつなヒトて、いってたよね!?」

「大切な人よねぇ? 透」


悪戯にクスっと笑う奈々を見て、全てを悟った。


屋上で話してる時、告白しようと思うって相談したら、透がすることないって怪しく笑った奈々。


なぜかのんに、パフェを奢ってと言われていた奈々。後夜祭が始まる前、楽しみだとうっとりしていた奈々。



奈々は……こうなるって分かってた? 仕組んだ!? 何て恐ろしい子なの!!


「じゃあ……のん、ダレモノ?」


誰?と何者?が混ざってるみたいだけど、あたしを恐る恐る見る昴にはあえて突っ込まない。突っ込めない。