「トール」
昴に名前を呼ばれると、幸せな気持ちになる。
男みたいな名前だけど、初めて昴に名前を呼ばれた時、透で良かったと心底思った。
紛れもなく、あたしだけに言ってる言葉だから。あたしだけを見て、言ってくれる言葉だから。
「――っ!?」
背中をつねられて、急に現実に戻る。
確信犯であろう奈々を見ると、涼しい顔をしてあたしを見ていない。
「……? 奈々…? なに……」
「トール」
あたしは奈々から視線を逸らして、前を見る。
……昴……?
昴が振り向いて、こちらを見ていた。キョロキョロと周りを見渡すと、生徒も司会も、あたしを見ているようだった。
『なんと1年プリンス! 向井 透ちゃんでしたー!』
――え、何が!?
訳が分からないまま、あたしは司会者に昴の目の前まで連れて行かれた。
『さぁ、では昴くん! 愛の告白をしていただきましょう!』
愛の告白!?
驚いて昴を見ると、深いブルーの瞳と目が合う。
「……っ」
いつもなら、恥ずかしくて俯いてしまうのに。
何の躊躇いもなく、真っ直ぐあたしの目を見つめる昴の瞳に、捉えられてしまった。
体が、動かない。
……ていうか、何であたしが昴の目の前に立ってるの? 昴は今から好きな人に、告白するんじゃないの?
愛の告白って、司会が…………え?
だって、昴の好きな人には、彼氏がいるって……。
「トール」
「は……い?」
戸惑っていると、昴が薄い唇を開いた。



