「ふぅん。それで?」
全ての授業が終わって清掃時間が始まり、あたしと奈々は1年生全クラスに隣接する光庭の掃除中。
「だから、友達になったんだってば!」
あたしは保健室から戻るなり、授業中だというのに奈々に聞いて聞いてとうるさくしていた。
まあ、笑顔で「首絞められたいの?」って小声で言われたから、今大事件の全てを話したところ。
「もう本当にどうしよう! 喋っただけでも奇跡なのに!」
「昴先輩って、バカだったのね」
「なんでさ!」
「その包帯。手当ての仕方も知らないなんて、紳士とはかけ離れてるじゃない」
「昴先輩はバカじゃない! 王子だもん!」
分からないのに、一生懸命手当てしてくれた。その優しさがもう、王子そのものっ!
「ここにもバカが1人」と、奈々は呆れて箒を動かす。
何さ! 奇跡の大事件が起きただけじゃなく友達にまでなれたっていうのに!
「全人類に昴先輩と友達になったことを自慢したいっ」
「これっぽっちも羨ましく思えないわ」
「ねぇ奈々! 友達って何だろうっ」
「……どうせ挨拶とかする程度でしょう」
挨拶! そっかそっか。これからは、おはようとかさよならとか、言っていいんだ!
……そしたら昴先輩、また笑ってくれるかなぁ。
自分でも分かるくらい、顔の筋肉がゆるむ。
「透」
「へ?」
「気持ち悪いからニヤニヤしないでちょうだい」
「……」
ちょっとくらいニヤニヤしたっていいじゃんか!