『さぁさぁ、皆さん! ついにこの時が来ました! 王子に告白して頂きましょ~う!』
声が枯れちゃうんじゃないかってくらい叫ぶ生徒たちに、司会のテンションも上がりっぱなしだ。
『えーっと……じゃあ、イケプリの皆さんは後ろで聞いてて下さ~い!』
昴以外の8人は後ろに下がって、椅子に座る人もいれば腕を組んで立ってる人もいる。あたしは俯いて、立っていた。
『ではもう少し詳しく聞いてみましょうかね~、出逢ったのはいつですか?』
「July……シチガツ」
『同じ学校ということだけど、その子とはどんな関係ですか!?』
「センパイと、こーはいです」
『あら~そうなんですか。何か切ないね~。なんで、好きだなと思ったんですか?』
「……hugしたいと思ったから」
「「きゃあぁぁあ!!」」
――ダメだ。やっぱり、聞きたくない……。
『ハグ……っていうのは、抱き締めたいってことですよね? かなり好きな感じですね!』
「……ですネ」
聞きたくないよ。
ぎゅっと片手で掴んだ自分の腕に爪が食い込む。
痛さに涙が滲んだわけじゃない。思い出が、昴に抱き締められる幸せが、体中に沁み込んでいたから。
――体育倉庫に閉じ込められてた昴と出逢ってから、今日まで。どれだけの時間を昴と過ごしたんだろう。
友達になって、一緒にお昼を食べるようになって、メールも電話もするようになって。
隼人率いるイケメン集団と乱闘になったり、昴の取り巻きにヤキモチやいたりもした。
カフェに行ってから昴って呼ぶようになって、昴先輩って言ってた自分がもう懐かしい。
だけど呼び名が変わっても、昴は昴のままだった。あたしの気持ちも、変わらなかった。
再テストに向けての勉強会はドキドキして、合格を一緒に喜んでくれた昴に泣きそうになって。
そんなあたしに気付かず、昴はいつも、笑ってた。



