「王子、好きな人いるんだ……」
「なんかショックだね~」
横一列に並んでる先輩のプリンセスたちが、ヒソヒソと話している。
『王子がベタ惚れなんて、よっぽど可愛いんでしょうね~! その子とは、付き合えそうですか?』
「……ムリだと、おもいます」
『え!? 何で!?』
「カレシが……」
『彼氏がいる!? まさかの片思いですか!? 王子が……って女子! 目を輝かせない! ……どうするつもりですか? 告白しますか!?』
マイクを向けられた昴は無言で、あたしは頭が痛くなってくる。
昴から発せられる言葉が“NO”であることを、ひたすらに祈った。
「Yes。します」
「「いやあぁぁぁあ!!」」
「告白しないでーっ!」
『女子の皆さ~ん……。気持ちは分かるけど応援してあげましょうねっ!』
「引っ込め司会!」
「やだー! 王子ー!」
『はいまだ終わってないから黙って~! ところで王子っ! 好きな人って同じ学校かな?』
「……はい」
ザワッとどよめきが起こる体育館。スポットライトに照らされる昴は、逆光で暗くなってよく見えない。
眩しさに、目が眩む。視界が、ぼやける。
……同じ学校なんだ……彼氏がいる人に片思いって……相当好きなんだな……。
「奈々……」
「……なぁに?」
隣に座る奈々に顔を向けることなく、昴の背中を見ながら呟く。
「昴……好きな人いるんだね」
「そうみたいね」
「………」
聞き間違いなわけないのに。奈々に確認なんかして、あたしは何がしたいんだろう。
……誰かに否定してほしい。
昴に好きな人なんかいないよって、言ってほしい。



