『彼女が欲しいということだけど、もしかして……好きな人いるのかな?』
思わずごくりと喉を鳴らす。会場のみんなが、そうして昴の答えを待っていた。
――やだ。やだ。
いないって言って! いるなんて言われたら、あたしどうすれば……。
「います」
「「嘘でしょぉぉお!?」」
「いやーっ!!」と頭を抱える女子の皆さんに、司会も含め男子までポカンとしている。
『――なんと、好きな人がいる!? 女子の皆さん、失恋決定です!』
失恋……失恋!? あたし今失恋したの!? 告白してもいないのに!?
『どんな子ですか! 可愛い!? 美人!?』
「カワイー」
――あ……。
咄嗟に目を瞑って、両耳を手で塞いでしまう。
聞きたくない。
あたし以外に言う、“カワイー”なんて。
ましてや、昴が好きな子に言う“カワイー”なんて、気持ちが違いすぎる。
そんな言葉、聞きたくない……。
『どんな子ですか?』
「いいコ。あかるくて、やさしー」
『ほうほう! いつから好きなのかな?』
「……いつの、まにか?」
『あ~。気付いたらもう好きだった的なね! その子の、どんなとこが好き?』
「……ヒトを、たいせつにするトコ。ワルいことには、おこる。あと、everyday,smile」
『ベタ惚れですかっ!?』
「ベタボレ…?」
『あぁ、え~っと……いっぱい好きですか!?』
「……ハイ。いっぱい、スキです」
どんなに耳を塞いでも、マイクに繋がるスピーカーから司会と昴の会話が聞こえる。
そっと目を開けて、昴の背中を見つめた。



