意味が分からない。
何で、あたしがここに立っているのか。何で、あたしが選ばれたんだか。さっぱりなんですけど……。
『さぁ奈々ちゃん! 一番聞きたい質問です! 今、好きな人はいますか!?』
「いないです」
あたしはにっこり笑う奈々と、歓声をあげる男子生徒を眺めた。
『なんといない! 男子生徒チャンスですねー! 奈々ちゃんのタイプって、どんな人ですかー!?』
「楽しませてくれる人ですかね」
『なるほどー! 例えば俺みたいな?』と、爆笑する生徒と盛り上げ上手な司会と、奈々のやりとりを見ていて気付く。
あたしも同じような質問されるってことだよね……?
奈々……何でそんな普通に答えられんの? 無理。あたし絶対、無理……。
さーっと血の気が引き、体が冷たくなっていく。
『奈々ちゃんは彼氏ほしいですか!?』
そんな質問まで!? バカなの!? そんな質問して、何になるの!?
「いいえ」
『おっと、まさかの展開です! 何でいらないの!?』
「今は友達と過ごすのが1番楽しいからです」
『そんな奈々ちゃんに彼氏が欲しいと言わせる男子募集中っ! では続いて、向井透ちゃーん!』
ぎょえーー!! きたぁーー!!
『さて、透ちゃんっ! 今まで付き合ったことはありますか?』
ニコニコと笑う司会にマイクを向けられて、あたしは引きつった笑顔を見せる。
「な、ないです」
あぁ、顔の筋肉がヒクヒクする……。
こんなことになるなら、奈々に作り笑顔を伝授してもらうんだった。