「……る、透っ!」

「――え」


顔を上げると奈々は立ち上がっていて、あたしの顔を心配そうに覗いていた。


「何落ち込んでるのよ。ちゃんと話聞いてた?」

「あ、ごめん……何?」


ていうか、何で奈々は立って………あ、みんな立って盛り上がってる。


「立って」

「え? あ、はい」

「行くわよ」

「え?」


行くってどこに?と聞くより先に、奈々はあたしの手を引っ張ってステージ前に押し寄せている人混みを掻き分けていった。


「わ、すいませっ……ちょ……何!? 奈々っ!」


チビのあたしは人にぶつかりまくりながら、どんどん前へ連れて行かれる。



『ようこそ~! 1年生プリンセス!』


……はい?

人ごみにもみくちゃにされながら着いた先は、なぜかステージの上。


状況が飲み込めていないあたしは、奈々に状況を説明するように視線を向けた。


「1年生のプリンセス、さっき発表されたのよ。私と、透ですって」


へぇー……。


「はぁぁぁあ!?」

「選ばれたら、ステージに上るしかないでしょう?」


いやいや……。何をそんな冷静に……ていうか、あたしが、奈々と同じプリンセス?


何の間違いですか。


『では、見事プリンセスに輝いた2人に早速質問してみましょーう! 1-3、優勝しただけありますね~! ふたりともチャイナドレスよく似合ってます! まずは三神奈々ちゃんに質問ターイムッ!』


奈々は数々の質問に、美しい笑顔で答えている。


あたしは状況について行けず、呆然と奈々の作り笑顔を見てるだけ。