プラチナ王子



「先輩方から見てどうかしら? 1-3は」

「……うーん。やばい、よね?」


苦笑するキョウが翔太の腕を肘で小突くと、眉を寄せた翔太が「……せやなぁ」と呟く。


「優勝奪われそうやな」

「ですって。やったわね透」

「へ!? あ、うん!」

「お客さんも途絶えてないしね。俺らのクラスよりすごいよ」

「……」


キョウの笑顔を見ながら、太ももの横で拳を握った。


「――昴は? ……美味しい?」


震えそうになった唇で何とか聞くと、昴は一瞬だけあたしを見る。


「オイシー」


それだけ言ってすぐ視線を逸らされたあたしは今、どんな表情をしてるんだろう。


何で……。

ただそれだけを頭の中で繰り返しながら、握った拳に力を入れた。


「良かった。……じゃあ、あたしテーブル片付けなきゃだから。ごゆっくりっ」


出来るだけの笑顔でそう言って、のんが座っていたテーブルを片付けに行った。


昴たちに背を向けて、俯いて、滲んだ涙が見えないように。



何で? あたし、何かした……?


分かんない……。考えようとしても、昴のそっけない態度ばかりがぐるぐる再生されて、考えられない。


唇にぐっと力を入れ、涙を拭って昴たちの方を見遣った。


……笑ってる。


奈々とは笑って話すのに、何であたしには笑ってくれないんだろう……。


「……ばか」


地面に落とすように呟きながら、ウィッグの前髪をくしゃりと握る。


奈々にまでヤキモチやいて……重症だ。バカみたい。



昴は、あたしの恋人でもなんでもないのに。