「っのん!?」
びっくりして涙が引っ込んだのは、抱き付かれてすぐ強制的に体を反転させられたから。
おかげで昴たちに浮かんだ涙を見られる心配はなくなったけど……。
「ど、どうしたの?」
「休憩っていつ?」
「え? もうないよ?」
今は13時過ぎ。一般公開は14時までだから、もう休憩はない。
「えぇぇ……。透と一緒に文化祭周りたかったのに」
のんは不満そうにあたしの腰に手を回しながら、がっくりとうなだれる。
「ごめん……教えておげば良かったね」
「まあ、デートなんていつでも出来るからいいけどさぁ」
デート!? のんがあたしと!? 何それ素敵!
「……なぁ、さっき透と話してた子やんな?」
翔太の言葉で、のんはあたしから離れる。
「……えーっと? あ、俺“のん”っていいます。こんにちはー」
「のん?」
キョウが不思議そうにすると、のんはにっこり笑った。
「みなさんイケメンですね~! 透ぅ~。妬けちゃうんだけど」
「のんだってイケメンじゃん。どっちかと言うと可愛いけど」
「俺のこと好きだなんて、嘘ばっか」
「何で!? 好きだよ!?」
「ほんとに?」
「ほんとに!」
「じゃっ、いっか」
満足したのか、のんはあたしの頭を撫でる。
「じゃあ俺、帰るね? 奈々、今度チョコレートパフェおごってねっ!」
「バイバーイ」と、手を振ってのんは帰っていった。
何で奈々にパフェ? ていうかサッと来てサッと帰って行くなぁ……。
のんが視界から消えると、「ところで」と奈々の声が耳に入った。



