「ゴメンね。ゆっくり、できなくて」
「ううんっ! 楽しかった!」
出口まで見送ってくれた昴に、無理やり笑顔を作る。
「……?」
昴は何も言わず、あたしの頭を撫でてきた。
「……どうしたの?」
「ん~…」
「?」
疲れてるのかな?
あたしは必死に背伸びして、何とかギリギリで昴の頭を撫でる。
「お疲れさま。頑張ってね」
にこっと笑うと、昴はぽつりとつぶやいた。
「……bearable」
ベレ……何て言った?
「また、あしたネ」
いつの間にか笑顔が戻った昴は、右手を胸に当てた。接客していない他の執事も、同じようにする。
「「行ってらっしゃいませ、お嬢様」」
「行きましょう透」
「あ、うん」
最後にちらっと昴を見ると、微笑みながら手を振ってくれた。
……さっき……もしかして。多分だけど、我慢できるって言った?
我慢って、何をだろう……。
不思議に思いつつ、あたしと奈々は休憩時間を楽しく過ごしてから、クラスに戻って接客を再開。
1-3は4時まで人が途切れることなく、1日目は大成功に終わった。



