「――あら。可愛いパンダさんね」
「奈々っ!」
「奈々ちゃん綺麗ー!」
「すごい似合う!」
「いやぁ……美人が際立つねー」
「本当? 嬉しいわ。ありがとう」
準備を終えた奈々は黒いチャイナドレスを着て長い髪を巻き、サイドにアップしている。
いつもより少し濃い化粧が、奈々の綺麗な顔を一層際だたせていた。
「奈々綺麗ぃ~…」
「透も可愛いわよ」
パンダの顔が描かれてあるフードをあたしに被せながら、にっこり笑う奈々。
眩しいです……。クラスの男子が奈々を見て、頬を染めてますよ……。
「看板娘とマスコットキャラ揃ったね! てことで、呼び込みお願いねっ」
マスコットキャラァ!?
なんて差……。これが一般人と富裕層に対する扱いの差ですよ……。
「はい、看板持って? マスコットキャラさん」
微笑みながら看板を差し出す奈々に、ギリギリと歯ぎしりをしてみる。
くそぅ……。
「みんなのバカッ! 今に見てろ! 飲食部門売り上げ1位にしてやるんだからぁああああ!!!」
あたしは奈々から看板を奪って、廊下に出る前にクラスメイトへ八つ当たり。
「結局頑張んのかよ!」
「やる気満々じゃん!」
「頼むぞマスコットーッ」
「うっさい! 客山ほど入れてやんだから! 忙しさに心身共に疲れ果てろっ」
はははは!とクラスメートに笑われながら、あたしと奈々は呼び込みに出た。



