プラチナ王子



「お疲れ様でした~っ」


呑気な女性スタッフが笑顔を振りまき腰を折る。


「こちらプレゼントでーす」

「「…………」」


差し出されたのは最初に出てきた血まみれの赤ちゃん……の、キーホルダー。


「「いりません!!」」


あたしと昴は断固拒否し、フラフラと立ち上がって近くのベンチに座った。



「「…………」」


ベンチに座ると、ドッと疲れが襲ってくる。


大丈夫とか言っといて、あたし思いっきり叫んでたな……。


「ショータとナナは、まだ中かな?」

「そうかもね」

「ナナ、ghostへーき?」

「平気どころか余裕だと思うよ」


逆にお化け役を脅してることでしょう……。


パーカーのポケットに入れていた携帯が振動して、取り出してみれば今まさに話題に上がった彼女からだった。


「奈々からメール」

「ナンデ!?」


お化け屋敷にいながらメール打つなんて、さすが奈々様……。


『翔太がビビッてるから、まだ出られそうにないわ。2人で観覧車に行ってて? あとで合流しましょ。』

「……だってさ」


昴にもメールを見せると、首を傾げられる。


「ビビ……てる?」

「怖がってるってこと」


「ショータもコワいんだ」と笑って、昴は立ち上がった。


「いこー、カンランシャ」


いつの間にか離れていた左手を、昴は再びあたしに差し出す。


「……」


そっと右手を乗せると、昴の大きな手はあたしの小さな手を、きゅっと握り返してくれた。