「……自分のことは嫌いじゃないけど、昴が相手となると……」
リアル王子と子猿っていうか……月とすっぽんすぎてですね……。
「透は可愛いわよ」
当たり前のことのようにあっさり言ってくれる奈々は、美人すぎます。
でも、そんな奈々に言われると嬉しい。
「まず、積極的になることから始めればいいじゃない」
微笑んだ奈々はフェンスの下を指差して、見下ろすと校庭に生徒が集まっていた。
「……昴」
ちょうど、昴のクラスが体育の時間だったらしい。
ああ……ジャージ姿も素敵、だけど。
「遠いなぁ……」
フェンスに手を掛けても、あたしは屋上にいて昴は校庭にいる。
学年が違うんだから同じ授業に出られるわけがないけど、昴と同じクラスの女の子たちは、あたしよりもずっとずっと昴に近い位置にいる。
いつだって昴が見れて、話せて、同じ時間を共有できて……たまに昼休みと放課後を一緒に過ごすくらいのあたしとは、違うよね。