プラチナ王子



保健室に向かわず屋上へ向かっていると、奈々は「そうねぇ……」と言いながら何かを考えている様子。


「月島先生を抱きしめたいと思う?」

「はぁ!? 思わないよ!」


何でつんちゃん!? 無理むり! 絶っっ対ヤダ!


「隼人先輩は?」

「げろ……」


いい奴だけど、隼人もヤダよ。だって、隼人だし!


「てか、さっきから何の話?」


屋上に続く階段をのぼりながら奈々に問いかける。


「嫌いな人を抱きしめるかしら」

「…………」

「昴は透のこと、嫌いじゃないわ」

「いや、でも……」

「はー。いやとかでもとか、めんどくさいわね」


奈々が屋上のドアを開けると、爽やかな風が吹き抜けた。


……だって、仮にそうだとしても、喜んで頑張っていいのか分かんない。


昴に嫌われてるとは思ってないけど、あたしがしようとしてることで多かれ少なかれ今の関係が違ったものになっていく気がして。


それを昴は自然に受け取ってくれるのかなって考えると、怖い。



「透はもっと自信を持つべきよ。自分を好きにならない人が、他人に好きになってもらおうなんて甘いわ」


奈々はフェンスに寄りかかり、綺麗な目であたしを見据えた。