プラチナ王子



「はぁ~……遊び行くかなぁ、昴先輩」


壁に寄り掛かって溜め息を吐くと、お化粧直しをしてる奈々は「行くわけないじゃない」と言い切った。


「どう見たって嫌ってるでしょ、あの反応は」

「嘘だぁ~」

「翔太もキョウもそうだけど、ずっと苦笑いじゃない」


………言われてみれば確かにそうかも?


うーんと宙を見て思い返していると、奈々があたしの髪にまでブラシを通す。


「それより透、ちゃんと昴って呼びなさいよ」

「無理むり! 奈々は呼べるの!?」

「昴」

「うぅ……」


奈々はブラシをしまうと、今度は桜色のリップクリームを取り出して唇にさっと塗りつける。


「呼び捨てしないと、また透の面白い話するわよ」

「黒ぃぃぃぃい!」

「はい、練習」

「……昴」

「何で昴の前では言えないのかしらねぇ……」


「使う?」と奈々がリップを差し出してきたけれど首を左右に振った。


「昴先輩は、昴先輩なんだよな~」


だいたい、呼び捨てなんて恥ずかしすぎる……。


「仲良くなった証拠じゃない」

「そうかもしれないけどー……」

「ウザイわね」


奈々はリップのキャップを取り外すと、あたしの唇にぐりぐりと塗ってくる。


「ぶっ! やめ……っ」

「リップクリームくらい使ったらどうなの?」


そう言った奈々が塗ってくれたのは、ストロベリーの香りがするリップ。


……美味しそう。


「食べられないわよ」

「……」


思わず唇を舐めそうになったあたしに奈々は冷ややかな視線を向けて、ポーチのチャックを閉めた。