「おーい、瑞希〜!起きろ〜」
「おねーちゃーん!ご飯だよ〜!」
私を呼んでいるお父さんと弟の大きな声に続いて聞こえてきたのは、バタバタと階段を駆け上がる音。
たくさん、人が家に入ってきたみたい。
一分前まで静かだった我が家は、一体どこへ行ったのやら。
騒がしくて、私の目は、もう、ぱっちり。
ぐっすり眠っていたというのに。
(安眠を、邪魔しないで......!)
顔をしかめながら寝返りをうつ。
「瑞希————、おきて—————だろ」
「いや、——————だよ」
「—————夜更かし————」
「遅刻——————よね」
「—————、間にあわない———————」
足音が大きくなるとともに、ところどころ、5人の異なる人間の声が聞こえてくる。
その声たちは、いつも、まるで拷問かのように聞き続けた、知りすぎた声。
(来た..........)
アイツらが............!!
ヤツらの足音はどんどん大きくなり、私の部屋の前で止まる。
そして。
バンっ
大きな音を立てて開くドア。
「おい、瑞希。遅刻すんぞ」
「間に合わないよ〜」
「瑞希、昨日遅くまでゲームしてたでしょ」
「こりねーヤツだな」
「ってか、早く起きろ」
ドタバタと部屋に入ってきて、私のベッドを囲んで騒ぎ立ててくる5人組。
はぁ。私はため息をつく。
少しはノックくらいしてよ.......。
この、遠慮のないコイツらこそが。
「................幼馴染だからって、毎日来なくていいって言ってるじゃんーーーーっ!!!」
——————そう、私の、幼馴染たち。
いつも、私を起こしに来ては、こうやって騒ぎ立ててくるからホントに迷惑だ。
「でも、瑞希は一人じゃ起きられないじゃん?」
「ゔっ」
(ず、図星だ..........)
「あは、瑞希、言い返せないんだ」
っ、いちいち反応しなくて良いって!!
このもやしみたいに背が高くて、茶髪の男は、夏目柊。
私たちの中で一番年上で、高校三年生。
最近の好きなことは、サーフィンだって。
一週間前には、ソフトボール最高!とか、言ってたのに。
柊は、飽きっぽいからなぁ。
「ダメだよっ!柊くん!本当のこと言っちゃったら、みーちゃんが可哀想でしょっ⁉︎」
..............それ、全くフォローになってないよ、奈津.........。
この、ふわっふわのピンク髪の、かわいい系男子は、天沢奈津。
私の一つ年下で、高校一年生。
ふわふわした雰囲気と、その可愛さもあいまって、一応、モデルをやっているらしい。
確か........、服着るモデルだったはず??
詳細はわからないけどね。
...........そして、私のことを唯一、『みーちゃん』と呼ぶ男。
あんな幼い頃につけたあだ名がここまでくるとは、私も思わなかった。
「————瑞希、起こさなかったら、起こさなかったで怒ってきたくせに.........」
手を組んで見下ろしてくるのは眞島空河。柊と同じく高校三年生。
(さ、さすが、空河........っ!よく覚えてるね.....)
私も忘れてたよ。
空河が得意なのは、暗記系科目の勉強と、戦い系ゲーム、って言ってた。理科とか社会とかめっちゃ得意だし、スポーツだって、初見でなんでもできちゃうヤツ。
まぁ、まとめれば、頭が良いってこと。
赤点ギリの私とは大違い。だから、お父さんはいつも、「瑞希は、空河くんを見習ってくれよ〜」って言ってる。でも、人には得意不得意があると思うんだよね。
「あぁ、もう、どっちでも良いってそんなの......」
ぶつぶつと文句を言いながら私の布団をひっぺがそうとしてくる“地毛:栗色&瞳:青”の男子。
コイツは、北斗凛。高校二年生。
いつも無愛想で、基本無口だけど、実際は優しい、不器用なヤツ。
意外と世話焼きなところがあったりする。
好きなものは、シュークリームと、ショートケーキと栗きんとん。
とにかく甘いものが好きなんだ。
本人は隠してるつもりみたいだけどね〜。
「あーほら、瑞希、早く着替えろ」
私の手をぐいっと引っ張って、無理矢理にでも起き上がらせようとするコイツは、一ノ瀬千颯。
私と凛と同い年で、高校二年生。
サラッサラの黒髪に、真っ黒の瞳のクールなヤツ。ずっと一緒にいるけど、千颯のことはよくわからない。とにかく秘密が多くて、ちょっとわかりにくいヤツなんだ。
「あーもーっ!わかったから!!出てってよ!!」
そして、私が七海瑞希。
早起きと勉強が苦手な女子高生。
昨日は、好きなゲーム:リアトクっていう戦闘系ゲームをしていて、夜更かししちゃった。
だからこそ、こうなっているのだけれど。
「あと、5分で支度してこい」
しかめっ面の凛の言葉を合図に、アイツらはぞろぞろと部屋を出ていく。
最後に、千颯が、
「これ、落ちてた」
と言って私にリアトクのゲームカセットを投げてきた。
ヤツらがいなくなった途端に、シーンとなる私の部屋。
普通なら、二度寝しているのだけれど、悲しいことに、うつらうつらしていたはずの私の目はぱっちぱちだった。
「はぁ、もうちょっと寝てたかったな.......」
渋々ベッドから這い下り、壁にかけてある制服に手を伸ばす。
白と紺のセーラー服に着替えて、机の上の学生証をカバンにしまった。
湊川高校。それが私たちの通う学校の名前。
公立の学校で、同じ地域からきている子たちが多いから、かなり仲の良い学校だ。
学校に通う大半の子達が、学校に近い湊川区域からきているのだが、私たち6人は例外だ。
私たちは、小さな橋を挟んで学校と離れた“パトリオアイランド”と呼ばれる孤島に住んでいる。
通学距離は長いけれど、海がすごく綺麗に見えて、人々も温かい自慢の島。
窓を開けて、朝日を浴びてキラキラと光る海を眺めていると。
「おい瑞希!!もう8時だって!!」
「うわー、遅刻しちゃうよ!!」
「着替えに何時間かけるつもりだよ!!」
「俺、先に行っても良いか?」
「朝飯抜きだぞ!!」
窓の下の方からでっかい声たちが聞こえる。
チラッとそちらに目を向けると、手を振り上げて私を呼んでいる幼馴染たちの姿が。
あぁ、騒がしいったらありゃしない。
でも、8時はまずすぎる.......!!
「まって、今行くーーーっ!!」
2階の階段を駆け下り、玄関のドアを開けると、何年も見てきた同じ光景。
「遅ぇよ」
「走るしかないよ〜....」
「鈍足の瑞希ちゃん、お姫様抱っこして走ってあげようか?」
「無理だろ、コイツ重いぜ」
「とりま急ごう」
人のこと、重いとか言いやがって........っ!!
一応、女子なんだよ、私はっ!
許せない!
メラメラと燃えていると。
「やべっ瑞希怒ったぜ」
柊が私をみて焦り出す。
「みーちゃん、怒った時はいつもより足早いよ、!」
「.......どうする?」
「そんなの一択だろ」
わかりきったように平然としている凛。
そして、一斉に千颯に視線が注がれた。
まるで、答えろと言っているかのように。
千颯は、そんなみんなを見渡して............。
「..........逃げるぞ」
バッ
身を翻す5人。その動きも同時で、やっぱり幼馴染だな、と今更思った。
でも、今はそんなことよりも。
「絶対許さないーーーーーーっ!!!!」
私も、5人の後を追って、走り出すのだった。
「おねーちゃーん!ご飯だよ〜!」
私を呼んでいるお父さんと弟の大きな声に続いて聞こえてきたのは、バタバタと階段を駆け上がる音。
たくさん、人が家に入ってきたみたい。
一分前まで静かだった我が家は、一体どこへ行ったのやら。
騒がしくて、私の目は、もう、ぱっちり。
ぐっすり眠っていたというのに。
(安眠を、邪魔しないで......!)
顔をしかめながら寝返りをうつ。
「瑞希————、おきて—————だろ」
「いや、——————だよ」
「—————夜更かし————」
「遅刻——————よね」
「—————、間にあわない———————」
足音が大きくなるとともに、ところどころ、5人の異なる人間の声が聞こえてくる。
その声たちは、いつも、まるで拷問かのように聞き続けた、知りすぎた声。
(来た..........)
アイツらが............!!
ヤツらの足音はどんどん大きくなり、私の部屋の前で止まる。
そして。
バンっ
大きな音を立てて開くドア。
「おい、瑞希。遅刻すんぞ」
「間に合わないよ〜」
「瑞希、昨日遅くまでゲームしてたでしょ」
「こりねーヤツだな」
「ってか、早く起きろ」
ドタバタと部屋に入ってきて、私のベッドを囲んで騒ぎ立ててくる5人組。
はぁ。私はため息をつく。
少しはノックくらいしてよ.......。
この、遠慮のないコイツらこそが。
「................幼馴染だからって、毎日来なくていいって言ってるじゃんーーーーっ!!!」
——————そう、私の、幼馴染たち。
いつも、私を起こしに来ては、こうやって騒ぎ立ててくるからホントに迷惑だ。
「でも、瑞希は一人じゃ起きられないじゃん?」
「ゔっ」
(ず、図星だ..........)
「あは、瑞希、言い返せないんだ」
っ、いちいち反応しなくて良いって!!
このもやしみたいに背が高くて、茶髪の男は、夏目柊。
私たちの中で一番年上で、高校三年生。
最近の好きなことは、サーフィンだって。
一週間前には、ソフトボール最高!とか、言ってたのに。
柊は、飽きっぽいからなぁ。
「ダメだよっ!柊くん!本当のこと言っちゃったら、みーちゃんが可哀想でしょっ⁉︎」
..............それ、全くフォローになってないよ、奈津.........。
この、ふわっふわのピンク髪の、かわいい系男子は、天沢奈津。
私の一つ年下で、高校一年生。
ふわふわした雰囲気と、その可愛さもあいまって、一応、モデルをやっているらしい。
確か........、服着るモデルだったはず??
詳細はわからないけどね。
...........そして、私のことを唯一、『みーちゃん』と呼ぶ男。
あんな幼い頃につけたあだ名がここまでくるとは、私も思わなかった。
「————瑞希、起こさなかったら、起こさなかったで怒ってきたくせに.........」
手を組んで見下ろしてくるのは眞島空河。柊と同じく高校三年生。
(さ、さすが、空河........っ!よく覚えてるね.....)
私も忘れてたよ。
空河が得意なのは、暗記系科目の勉強と、戦い系ゲーム、って言ってた。理科とか社会とかめっちゃ得意だし、スポーツだって、初見でなんでもできちゃうヤツ。
まぁ、まとめれば、頭が良いってこと。
赤点ギリの私とは大違い。だから、お父さんはいつも、「瑞希は、空河くんを見習ってくれよ〜」って言ってる。でも、人には得意不得意があると思うんだよね。
「あぁ、もう、どっちでも良いってそんなの......」
ぶつぶつと文句を言いながら私の布団をひっぺがそうとしてくる“地毛:栗色&瞳:青”の男子。
コイツは、北斗凛。高校二年生。
いつも無愛想で、基本無口だけど、実際は優しい、不器用なヤツ。
意外と世話焼きなところがあったりする。
好きなものは、シュークリームと、ショートケーキと栗きんとん。
とにかく甘いものが好きなんだ。
本人は隠してるつもりみたいだけどね〜。
「あーほら、瑞希、早く着替えろ」
私の手をぐいっと引っ張って、無理矢理にでも起き上がらせようとするコイツは、一ノ瀬千颯。
私と凛と同い年で、高校二年生。
サラッサラの黒髪に、真っ黒の瞳のクールなヤツ。ずっと一緒にいるけど、千颯のことはよくわからない。とにかく秘密が多くて、ちょっとわかりにくいヤツなんだ。
「あーもーっ!わかったから!!出てってよ!!」
そして、私が七海瑞希。
早起きと勉強が苦手な女子高生。
昨日は、好きなゲーム:リアトクっていう戦闘系ゲームをしていて、夜更かししちゃった。
だからこそ、こうなっているのだけれど。
「あと、5分で支度してこい」
しかめっ面の凛の言葉を合図に、アイツらはぞろぞろと部屋を出ていく。
最後に、千颯が、
「これ、落ちてた」
と言って私にリアトクのゲームカセットを投げてきた。
ヤツらがいなくなった途端に、シーンとなる私の部屋。
普通なら、二度寝しているのだけれど、悲しいことに、うつらうつらしていたはずの私の目はぱっちぱちだった。
「はぁ、もうちょっと寝てたかったな.......」
渋々ベッドから這い下り、壁にかけてある制服に手を伸ばす。
白と紺のセーラー服に着替えて、机の上の学生証をカバンにしまった。
湊川高校。それが私たちの通う学校の名前。
公立の学校で、同じ地域からきている子たちが多いから、かなり仲の良い学校だ。
学校に通う大半の子達が、学校に近い湊川区域からきているのだが、私たち6人は例外だ。
私たちは、小さな橋を挟んで学校と離れた“パトリオアイランド”と呼ばれる孤島に住んでいる。
通学距離は長いけれど、海がすごく綺麗に見えて、人々も温かい自慢の島。
窓を開けて、朝日を浴びてキラキラと光る海を眺めていると。
「おい瑞希!!もう8時だって!!」
「うわー、遅刻しちゃうよ!!」
「着替えに何時間かけるつもりだよ!!」
「俺、先に行っても良いか?」
「朝飯抜きだぞ!!」
窓の下の方からでっかい声たちが聞こえる。
チラッとそちらに目を向けると、手を振り上げて私を呼んでいる幼馴染たちの姿が。
あぁ、騒がしいったらありゃしない。
でも、8時はまずすぎる.......!!
「まって、今行くーーーっ!!」
2階の階段を駆け下り、玄関のドアを開けると、何年も見てきた同じ光景。
「遅ぇよ」
「走るしかないよ〜....」
「鈍足の瑞希ちゃん、お姫様抱っこして走ってあげようか?」
「無理だろ、コイツ重いぜ」
「とりま急ごう」
人のこと、重いとか言いやがって........っ!!
一応、女子なんだよ、私はっ!
許せない!
メラメラと燃えていると。
「やべっ瑞希怒ったぜ」
柊が私をみて焦り出す。
「みーちゃん、怒った時はいつもより足早いよ、!」
「.......どうする?」
「そんなの一択だろ」
わかりきったように平然としている凛。
そして、一斉に千颯に視線が注がれた。
まるで、答えろと言っているかのように。
千颯は、そんなみんなを見渡して............。
「..........逃げるぞ」
バッ
身を翻す5人。その動きも同時で、やっぱり幼馴染だな、と今更思った。
でも、今はそんなことよりも。
「絶対許さないーーーーーーっ!!!!」
私も、5人の後を追って、走り出すのだった。


