偽りのアイドル

「……独りで行くから」


「ちょーっと待った!
姉ちゃん、すごい方向音痴だし、ここの土地勘ないでしょ!」


う……。


「……というか煌まで付いて来なくても良かったんじゃない?」


だって、社長の元で育てば良かったんじゃないかな?



煌にとっての親は夫婦でもない社長と風海で。


母さんと父さんの事を覚えていなくて。


でも私の母さんと父さんは母さんと父さんで。


かけがえの無い仲間の社長と風海でも、ここだけは譲れない。


私の親は……母さんと父さんの二人だけなんだ。



「え〜、姉ちゃん居なくなるならついてくよ」


「全く……」


「煌がこんな調子でな」


……風海も諦めてる。


「煌が決めた事だから良いじゃないの。
……莉音!
莉音は、絶対に!! 変装しなさい!!
そうね……有名人が集う学校だけれど……あっ、」


有名人が集う学校……?

は?


「……そ、そうよ!
天音事務所の社長令嬢だって言いなさい!」


事実だけどさあ。


私は、菊乃(きくの)なんだよねぇ。
ま、今は天音(あまね)だけど…。
──養子縁組で。


「姉ちゃん、姉ちゃん! これ着替えて!」


え?


黒髪のウィッグに、黒のカラコン…。


なついなぁ。アイドル時代はこれで外出てたから…。 


今? 今は……引退して半年……家に籠もってました。


で、でも大丈夫!
勉強は引きこもりでもきちんとやっていたから……!