まぁ、噂に関してわたくしは、エリオット殿下を問い詰めることもしなかったしね。ルート確認のようなものだし。

 えーっと、じゃあこの状況、どうすればいいのかな?

 みんなこっちを凝視しているし、聞き耳立てているし。パーティー会場だよ、もう少し(にぎ)わってよ!

「マリー嬢から相談されていてね。カリスタに意地悪をされている、と。だが……わたしの知っているカリスタは、理由なくそんなことをする人ではない。だからこそ、マリー嬢がどんなことをしてカリスタに意地悪をされていると感じるのかを、調べる必要があった」

 そんな理由で調べていたんだ……。エリオット殿下のわたくしに対する評価がえらく高いことに驚きつつも、言葉の続きを促すように彼を見つめた。

 エリオット殿下は顔を赤らめて視線をそらしてしまった。どうしてそこで赤くなるの?

「すると、面白いことに学生たちからいろいろな証言が出てきてね」
「証言、ですか?」
「ああ。マリー嬢のテーブルマナーを(いさ)めたことや、ダンスの指導をしたこと。婚約者のいる相手に近付かないように忠告したこと……他にもあるけど、聞く?」

 思わず首を横に振る。

 だってこの学園、淑女を育てる場所でもあるのだから……。あれ、待って? もしかして、周りから見るわたくしは悪役令嬢ではなく、ただのマナーに厳しい人……!?

 い、いやいや、そんなはずない。

 だってわたくしが注意したとき、マリーさま涙目だったもの!

 そうよ、わたくしはきちんと悪役令嬢をやっていたはず!