朝、夜、劣情。

 みっともなく唾液を垂らしたまま、抑えられない嬌声を漏らしてしまう舞緒の側に、朔夜ではない別の誰かの気配が近づいた。しかし、その人物が近づこうと特に気にした様子もない朔夜に、舞緒は意識が飛びそうになる直前まで首を絞められ、生き地獄を味わわされるようにその手を緩められ、数秒後にまた絞められ、また緩められ、絞められ、緩められ、弄ぶように呼吸を調整されてしまう。そのため、舞緒の頭はまともに回っておらず、もう一人の気配に集中することができなかった。

 どんなに苦しめられようと醒めることのない深い多幸感が、舞緒の思考を低下させ、恍惚とさせる夢のような世界に連れて行っている。ふわふわと陶酔する舞緒の耳に、どこからともなく熱のこもった声が届いた。

「最高だよ、樫野くん。最高にいいね。此奴とプレイしてサブスペースに入るくらい気持ちよくなってくれるなんて。此奴に強制的に達かされた時の樫野くんを見てからずっと、またその姿を見たいと思ってたから本当に嬉しいよ。逃げずに全部を見せてくれたご褒美、あげないといけないね」

 興奮気味に喋る朝葉が、舞緒の頭に手を乗せ優しく撫で始めた。頭がおかしくなりそうなほどの高揚感に、舞緒は心を奪われる。首を絞められ、頭を撫でられ、二人のDomから与えられるものは相反していたが、全身に広がるのは途方もない心地良さだけだった。

 朔夜がひたすら虐める役割を果たしているのなら、朝葉はひたすら褒める役割を果たしていた。虐めたい朔夜と、褒めたい朝葉。真逆の二人だからこそ、手を組んだ時には全てが過剰なものになる。嫌い合っていようとも、劣情を唆られるような相手が偶然一致し、不本意ながら共闘した結果がこれなのではないかと、舞緒は足りていない頭でぼんやりと思った。全て双子の企図であり、計画であり、打算であるとしたら、簡単に住処に連れて行かれ、簡単に快楽に溺れさせられている舞緒は、彼らの手のひらの上で転がされていると言えた。