朝、夜、劣情。

 アイマスクで自分の視界を奪っている舞緒は、朔夜の次の一手を、変化する空気で読もうと全神経を集中させた。舞緒を踏んだまま、朔夜が床に伸びている鎖を手にする気配とその音がする。鎖は、当然のように身につけた首輪に、当然のように繋げていた。

 緩んでいた鎖が張る。言葉もなく、朔夜は鎖を強く引っ張り、舞緒の顎を浮かせた。背中を踏まれているため、否応なしに首が絞まる。呼吸が困難になり、苦しさに呻くような声が猿轡を嵌めた口の隙間から漏れたが、朔夜が手を緩めることもなければ、舞緒が正気を取り戻すこともなかった。朔夜に命を握られてしまったことすら、舞緒を興奮させる要素となっていた。死ぬかもしれない。殺されるかもしれない。そのスリルもまた、気持ちのいいものに変わっていく。

「お前、救いようのないドMだな」

 落ちてきた声はあまりにも冷えており、何をされても善がる舞緒に対する侮蔑がふんだんに含まれていた。それが本音であろうとなかろうと、プレイの一種だと受け止める舞緒は、侮辱されていることにも高揚する。先程まで名字で呼んでくれていたのに、何かのスイッチが入ったのか、樫野からお前に呼称が変わったことにも乱雑さを感じて煽られた。

 首輪から伸びた鎖で呼吸すらコントロールされる舞緒は、朔夜に徹底的に冷酷に扱われた。酷ければ酷いほど、苦しければ苦しいほど、舞緒の身体は熱を持ち、恍惚とした快楽に溺れていく。朝葉とのプレイでは入り込めなかった底の底。酸欠に意識が朦朧とし、そこから更に落ちていくような浮遊感に包まれた。

 意識が飛びそうになる寸前で、鎖を緩められる。舞緒は喘いだ。口の端からだらしなく涎が垂れた。心臓が暴れているのは、恐怖心からではなかった。容赦のない首絞めプレイに、それにより垣間見えた死に、気が狂ってしまいそうなほどに陶然とし、血が滾っているのだった。