図書室ピエロの噂

 その瞬間、ミイラ男に横から体当たりし、その首に水間さんが 念珠(ねんじゅ)を巻き付けて、ねじり上げた。ぼくをかばうように立った哀名は、ミイラ男の体に手で護符を貼り付けている。するとミイラ男が少しして、ガクリと力を抜き、床に座り込んだ。

 はぁはぁとぼくが息をしていると、二人がぼくを見た。

「大丈夫か!?」
「楠谷くん、大丈夫!?」
「うん、へ、平気だよ」

 二人が助けてくれたからだ。だがそう言おうとしても、まだドキドキしていて言葉が出て来ない。ぼくはふるえたままで、ミイラ男を見る。

「この念珠があって助かった。泰我に借りておいてよかった」

 水間さんはそう言ってから、じっとミイラ男をにらんだ。

「動けないだろう?」
「オオ……オォ……はなセ……」
「聞きたいことがある。話してくれたら、解放する」

 強く言った水間さんは、念珠を引っ張る。すると首に手を当て、ミイラ男が頷いた。

「なんダ?」
「図書室ピエロの所在を知らないか?」
「……あア。最近あいつは、学校の中では、鏡から出られるようになったからっテ、図書室には全然帰ってこなク、なったなア。ピエロがどうかしたのか?」
「……学校内に、ピエロはいるのか?」
「学校内のことハ、人体模型にキくのが、一番だろうガ。違うカ?」
「理科室に行けばいいのか?」
「あいつも走り回ってるかラ、分からない。コレ以上は、オレも知らなイ。ハナせ! 約束だ!!」

 水間さんが悔しそうな顔をして、ミイラ男の首から念珠を外した。するとミイラ男が本に吸い込まれるように消えていった。ぼくの目の前で本がうかびあがり、自動的に閉じると、それは勝手にとんで、本棚に収まった。また誰かが見つけるのを待つのだろうか?

 ぼくがそう考えていると、水間さんがぼくのカタに触れた。

「瑛、それに哀名さん。危ないから、ここで二人は手を引いてくれ」

 真剣な顔をした水間さんを見て、ぼくは首を振る。

「人体模型こそ、学校にいるのに。水間さん一人で、どうやって調べるの?」
「……検討する。場合によっては、泰我に頼む」
「でも……」
「とにかく。危険なんだ。これ以上、二人を危険な目にあわせるわけにはいかない」

 ぼくが言葉に迷っていると、哀名がぼくの腕に触れた。

「楠谷くん、帰りましょう」
「……」

 うつむいたぼくは、なにも言葉がみつからないままで、立ち上がった。